TOP growとは growブログ フィリピン政府代表ナドレブ・サニョ氏の訴え

フィリピン政府代表ナドレブ・サニョ氏の訴え

2014.4.7

気候変動による飢餓の深刻化を私は、この目で見た。
途上国の適応策に必要な資金は、世界で最も裕福な85人の資産の5%に過ぎない。
行動すべきは今しかない。


国連気候変動交渉においてフィリピン政府代表を務めるナドレブ・サニョ氏より、オックスファム報告書「気候変動の脅威によって深刻化する飢餓〜世界の食料システムの備えを検証する〜」発表に寄せて公開メッセージが届きました。ナドレブ・サニョ氏の書簡は、横浜において開催された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)総会に際して、各国メディアに掲載されました。日本では、4月5日付けの朝日新聞「私の視点」にて紹介されました。



昨年11月、私は、ポーランドで開催された国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)の開会式に出席していた。最大規模の台風ハイエンの直撃により、母国フィリピンに壊滅的な被害がもたらされたのは、そのたった3日前のことである。私の家族や友人の安否を心配しながら、私は、フィリピンのように脆弱な国は、国際社会の協力なくして気候変動の多大な影響に対応することはできないと各国政府代表に向けて訴えた。

今日、各国政府は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による新たな科学報告書について協議するため日本に集まっている。報告書は、気候変動が世界中の人々にもたらす大きな脅威の概要と、その影響に適応するための施策を提言する重要なものだ。

私たちが直面する重大なリスクの一つが飢餓問題の深刻化である。いかなる文明も食料なしに繁栄することはできない。また、多くの文明が食料や水の不足によってその終わりを迎えた。

気候変動は飢餓を引き起こしている。私たちの食も影響を受ける。農家や漁師は、台風ハイエンのような異常気象、予測不可能となった季節、温暖化、そして海面上昇に直面している。食料価格は上がり、食料の質は下がっている。2050年までに、韓国の人口に相当する5000万人が新たに気候変動によって飢餓に陥る恐れがある。

台風ハイエンによって私の国は壊滅的な被害を受け、何千もの人々が命を失い、何百万という人々が家を失い、生活の基盤をなくした。私自身の家族も台風の衝撃を目の当たりにし、そして何百万人の生存者と同じように、あの台風の記憶に苛まされている。今も何百万の人々が倒壊した家屋にて生活し、生存のため緊急支援に頼って日々の生活をしのいでいる。農業を生業とする100万世帯、そして漁業を生業とする2万世帯が復興へ向けて奮闘しているが、彼らの直面する現実は厳しい。3300万本のココナッツの木がなぎ倒され、10万ヘクタールを超える水田が壊滅的な被害を受けた。農業分野の損失は10億ドルに上るとも言われている。

これはフィリピンだけの話にとどまらない。気候変動の影響が悪化する中、深刻な食料危機の脅威に世界の全ての国が直面している。しかし、自国フィリピンの経験、そして国際NGOオックスファムが新しく発行した報告書「気候変動の脅威によって深刻化する飢餓」が指摘するように、私たちの食料システムの気候変動の影響に対する備えは、危機的だ。先進国、途上国を問わず影響を受けない国はないが、世界の再貧困層と食料の安全保障が確保されていない国のリスクは最も高く、受ける影響も最も深刻なものとなるだろう。

私たちは、歴史的に重要な時期にいる。決断し行動すべきチャンスは限られている。これは、時間との闘いでもある。

気候変動に適応するための早急な支援が今必要だ。支援の有無は、最も貧しく、脆弱な国において、これから20年の間に何百万人が飢餓に陥るか否かを左右することになるだろう。支援に必要な額は決して非現実的なものではない。途上国の適応策には、年間1000億ドルが必要だと言われているが、この数字は世界の最も裕福な85人の資産の5%に過ぎない。

世界的な食料危機が未来の子どもたちの命を奪わないよう、私たちは早急にそして大胆な温室効果ガスの削減にも取り組まなくてはならない。気候変動と食料問題の解決を阻んでいる、化石燃料に依存したエネルギー政策との決別が必要だ。

世界中の人々が既に気候変動の問題に取り組んでいる。残念なのは、気候変動の脅威に真剣に向き合う政府や企業の数が少ないことだ。私たちは、今こそ力を合わせ、彼らに圧力を掛け、自分たちの生活を変え、気候変動が飢餓を助長することを防がなくてはならない。

私たちは今、気候変動ならびに飢餓の問題と闘っている。これは、負けるわけにはいかない闘いだ。しかし、それは力を合わせれば、勝つことのできる闘いであると私は信じている。