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フィリピンを想い、横浜で考える食の未来

2014.3.28

今年2月、日本の私たちが経験した大雪も、昨年11月にフィリピンを襲った台風30号(ハイエン)もまだ多くの人の記憶に新しいでしょう。いずれの場合も、食を支える農業や漁業が大きな打撃を受けました。温暖化が進むにつれ、こうした異常気象ともいえる自然災害の規模も頻度も増えることが予測されています。気候変動は、私たちの食、そして世界の飢餓問題の最大の脅威ともいえるのです。

台風ハイエン、フィリピン農業と漁業への打撃


台風ハイエンの被害を受けたフィリピン、レイテ島の26歳の漁師、ジョエルさん。台風で家は完全に崩壊、かき集めた廃材でどうにか家を作りました。船はもちろん、網などの道具も全て失いました。今は、海沿いを歩き、金属の廃材を売ることで少しばかりの現金を得ています。お金を貯めて船を買い、再び漁業に戻りたいといいます。しかし、台風によって大切な生態系であるマングローブや珊瑚礁も破壊され、水産資源は台風以前の40%に激減しています。復興への道のりはまだ長いのが現実です。


3歳の息子を抱きながら、無惨な姿のヤシの木の間を行くのは、同じくレイテ島のココナッツ農家のザカリアスさんです。家は、なぎ倒されたジャックフルーツの木に潰されて損壊したといいます。ココナッツは、フィリピン農業においてコメやサトウキビと並ぶ重要品目。この地域では、ココナッツ椰子の9割が失われました。椰子の木は、その成長に平均6年から8年が必要です。農家は、代替収入源の確保が急がれます。


日本の私たちも、決して気候変動の影響から免れることができません。昨年11月からの大雪による関東甲信地方の農作物の損失額は、1000億円を超えたとも報道されています。日本の農業や漁業が異常気象などの自然災害に襲われるリスクはもちろん、食料の60%を輸入に頼る日本は、世界の食料生産の動向に左右されます。

温暖化が進む中、食料安全保障を確保するために必要な施策とは


一方で、日本のような先進国とフィリピンのような途上国における決定的な違いもあります。途上国では、農業や漁業など自然資源に依存する生活基盤を持つ人々が多だけでなく、様々な社会インフラが脆弱です。また、貧しいほど、食費が収入に占める割合(エンゲル係数)は高い傾向にあります。つまり、途上国の人々にとって、気候変動の影響、また、食料生産へ被害などに伴って高騰する食料価格の影響は、より直接的で深刻だと言えます。

例えば、2012年の米国における干ばつで生じた農作物の損失のうち、農作物保険の補償対象となったのは、損失額の75%。一方、フィリピンを襲った台風ハイエンによる農作物の損失額のうち補償対象となったのは、全体のわずか6%に過ぎませんでした。また、正確な気象情報の把握と提供は、気候変動に直面する農家への大きな助けとなりえます。しかし、日本では約1,200平方キロメートルに対し観測所が1つ整備されていますが、アフリカのチャドでは、80,000平方キロメートルに1つしかありません。こうした整備の違いは、情報収集や伝達機能の大きな違いをもたらし、災害時の備えの有無や程度に直結します。

今週、横浜では、毎年開催されているの国連気候変動交渉(COP)に対し、気候変動に関する科学的見地の根拠を提供してきた気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の総会が開催されています。31日に発表される予定の第5次報告書では、気候変動がもたらす世界の食料への脅威が過去の予想以上に課題であることを示す新たな証拠が提示される見通しです。

日本を含め、気候変動への取組みがなかなか進みません。今年3月、環境省は、このまま新たな削減努力と適応のための備えが講じられることがなければ、日本の平均気温は、21世紀末には6.4℃上昇すると発表しました。IPCCの報告書では、3℃〜4℃の気温上昇で地球上の大部分で食料生産が困難になると言います。

気候変動は、遠い未来の話ではありません。私たちの食を支える農業や漁業への影響は各地で見られています。適切な気候変動対策への取組みが、この先20年、飢餓に直面する人々の具体的な数を大きく左右します。日本のエネルギーと食のあり方を持続可能なものへと変えていくべきは、今しかありません。

プレスリリース【気候変動と食料】オックスファム報告書発表
食料危機に対する各国の対策不足が明らかに

オックスファム報告書(日本語要旨)
気候変動の脅威によって深刻化する飢餓 〜世界の食料システムの備えを検証する〜