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日本の農業支援/投資のあり方を問うプロサバンナ事業

2013.6.4


現地の人々から「即時停止」を要求する公開書簡が安倍首相に届けられた日本・ブラジルによる農業開発支援プロジェクト「プロサバンナ事業」。農業投資が必要なのは明らかですが、問題はその内容です。



国内外で注目されるプロサバンナ事業とは


プロサバンナ事業とは、日本・ブラジル・モザンビークの三角協力による大型農業開発事業で、日本がブラジルに対して行った農業支援「プロデセール(PRODECER)」の「成功」をモザンビークで再現するものとして宣伝されています。プロデセールは、70年代、日本の大豆輸入先であった米国が輸出禁止措置を敷いたことから大豆輸入先の多角化を念頭に行われたもので、農業には適さないと言われていた「セラード」の大規模開発を進めることで、ブラジルを世界屈指の大豆輸出国へと変貌させた成功物語として語られています。


プロサバンナ事業は、モザンビーク北部のニアサ州、ザンベジア州、ナンプーラ州にまたがる巨大な農業開発プロジェクト。対象となる農地はなんと1400万ヘクタール。日本の耕作面積の実に3倍という途方もない規模です。事業は、農産物の輸出を担う港としてナカラ港の改修計画に始まり、モザンビーク内陸部と港をつなぐ鉄道や幹線道路の整備改修など、「ナカラ回廊」全体の開発を目指しています。


事業は、PPP(public-private partnerships:官民連携)として、早くから企業との協力体制が敷かれ、2012年4月には官民合同ミッションも実施されました。日本の商社などが大豆や胡麻などの生産輸出事業の展開を念頭に準備を進めています。日本政府JICAはODA事業として日本向けに適した大豆品種の開発や安定した収量確保のための農業支援を行い、こうした大豆を商社などが買い受け、日本の食卓へと届けます。ODA案件としてモザンビークの貧困削減と小規模農家支援を目的としながら、日本の食料安全保障にも貢献する「ウィン・ウィン」のプロジェクトだといわれています。




現地コミュニティとのしっかりとした協議がないまま描かれるマスタープラン


しかし、2009年にプロジェクトが合意されて以来、支援対象であるはずの地域コミュニティの小規模農家の人たちとの協議や情報共有がほぼ不在のまま、マスタープランの策定が進められてきました。一方で、企業参入を支援するための官民合同ミッション等は実施され、2010年3月には、 モザンビーク北部のナンプラ州と内陸部のニアサ州を結ぶ約 350kmの国道の改良を目的とした円借款事業が開始。また、2013年3月にはナカラ港改修を目的として更なる円借款事業が開始するなど、生産された農産物をナカラ港を通じて海外へ輸出するためのインフラ整備など、プロジェクトの大きな方向性を前提とした周辺事業は着実に進められています。


こうした経緯や事実から判断する限り、プロサバンナ事業は、輸出向けの大規模農業開発事業であることが言えます。支援対象であるはずの農家は、プロジェクトの計画に参画できていないこと、モデルとなっているブラジルでのセラード開発では、地域の小規模農家が必ずしも潤わなかったことや、大規模農業開発がもたらした環境面への影響も指摘されています。こうしたことから、プロサバンナ事業は、モザンビークの小規模農家支援にも貧困削減にもつながらないという批判や危惧がモザンビーク国内外の市民社会に加え、国際NGOなどからも寄せられているのが現状です。



 


プロサバンナ事業の「即時停止」を求める公開書簡


TICAD Vにあわせて、モザンビークの農民組織やNGO団体により起草された「公開書簡」を安倍首相に渡すという重任を託されモザンビークから3人が来日しました。


1人目は、2000以上の加盟団体をから構成されるモザンビーク最大かつ全国規模の農民組織、「モザンビーク全国農民連盟(UNAC)」のアウグスト・マフィゴ代表。2人目は、同じくUNACのアドボカシー(政策提言)を担うヴィンセント・アドリアーノ事務局長。3人目は、モザンビーク北部のナンプーラ州の100以上のNGO/CSOが参加する「ナンプーラ市民社会プラットフォーム」のアントニオ・ムジェネレ代表。ムジェネレ氏は、モザンビークの首都マプトで開催された市民社会会合でモザンビーク市民社会の代表として選出されました。彼らは、モザンビークの十数万人の人々の声を代表しています。


公開書簡では、「プロサバンナ(ProSAVANA)」事業の即時停止が要求されています。支援の対象とされる小規模農家との協議や情報共有が2009年の事業合意から現在までほぼ不在だったこと、リークされたマスタープランのドラフトともとれる報告書の内容が小規模農家の置かれた状況や彼らの望む開発のあり方にまったく立脚しないことに基づき、事業の即時停止と見直しを行い、小規模農家ならびに市民社会との協議や合意に基づいて事業を進めるためのインクルーシブなメカニズムの設置を求めています。


今回の来日では、公開書簡をTICAD V開催前夜に行われたレセプションにて安倍首相に直接手渡されました。また、国内のNGOや市民社会とともに、外務省やJICAとの協議、議員訪問などを行い、現地からこうした懸念の声が上がっている事実の周知に努めました。

今後、現地の小規模農家がプロジェクトに参画するためのメカニズムが設置されるなど、具体的な対応をJICAに期待するとともに、今後のプロジェクトの推移についてオックスファム・ジャパンとしても引き続きモニタリングならびに提言活動を行なっていきたいと思います。


Huffington Post Japan に掲載されたブログ投稿記事も合わせてご覧ください。

Open Letter "Carta Aberta para Deter e Reflectir de Forma Urgente o Programa ProSavana"(ポルトガル語原文)

公開書簡「プロサバンナ緊急停止のための公開書簡」(日本語訳)

PHOTO(上): 議員訪問で公開書簡を内容と背景を説明するUNAC代表アウグスト・マフィゴ氏(中央)とアドボカシー担当のビセンテ・アドリアーノ氏(右)(2013) Oxfam Japan

PHOTO(下): 準備された公開書簡(原文:ポルトガル語)(2013) Oxfam Japan


PHOTO(下): JICAでの意見交換の様子(2013) Oxfam Japan