TOP レボリューション vol.5  萩ごぼう

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萩ごぼう(伝統野菜)レボリューション

「萩の木になるモノづくり協議会」  地域の歴史を掘り起こす

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在来種、伝統野菜とは

伝統野菜とは、日本各地で農家が古くから、土地の気候風土や地域特性をいかして栽培し、利用し、種取りをしてつないできた、野菜の在来品種のこと。種の採取や栽培の手間、収穫量が少ないなど非効率的な面もありますが、土地の特性に合っているため比較的丈夫で、個性豊かな形や味が特徴です。


現在、市場に出回る野菜のほとんどは「交配種(F1種)」と呼ばれ、大量生産や厳しい流通条件に合うように、同じ規格で効率よく育つように改良されたものです。1970年代以降、大消費地向けに品種の単純化が進み、栽培が難しく買い手が少ない在来種の野菜は、その存続が危惧され、生物多様性も失われてきています。


近年は、農家の自家需要などで種がつながれ生存していた品種を、産地の地域おこしとして取り入れ、近傍の都市向けには地産地消商品、大都市圏向けにはスローフード商品とする戦略もあります。

山口県萩市と5種類の伝統野菜



伝統野菜の復活に街をあげて取り組みはじめている一例が、山口県北端の萩市。萩市は、橋本川と松本川という2つの川に挟まれ、一方を日本海、3方を山に囲まれ、6つの離島を有する、景観の美しい街です。交通が不便な立地を気に入った徳川幕府が萩城を建設し長州藩の城下町のおもかげをたたえ、吉田松陰が明治維新の指導者を育てた、松下村塾でも知られるなど、閉じた地域でこその高い文化をはぐくんできました。

しかし、今でも新幹線や空港など、高速交通網へのアクセスが著しく不便なため、人口の流出も多く、観光業も近年は衰退しつつありました。そこで、「伝統野菜を復活させること」をきっかけに、農業、観光業、外食産業、商業などを同時に盛り上げていこうと、市民と行政が一丸となった取り組みが始まりました。


まずは、あざみな、萩ころげ蕪、萩ごぼう、萩たまげなす、かちきしゃ、と呼ばれる、一度は流通の途絶えた5種の伝統野菜の栽培を開始。萩でしか味わえない新たな食材づくりとその流通に挑戦しています。メンバーはまず、そのそれぞれに、残っている歴史や、古くからの習慣を調査し、栽培をはじめました。

郷土食と流通


かつて、山口県内では、どの農家も冬から春にかけ庭先で栽培していたといわれる「かきちしゃ」は、葉の縁が赤茶色で縮れの多い縮緬ちしゃで、葉のフリルが綺麗。開いた外側の葉から順次“掻き”とって収穫するスタイルもめずらしいものでした。柔らかな葉の甘さとほろ苦さが味噌と合うのが特徴で、露地栽培では、霜が降りると赤く色づきます。


年中栽培が可能であり、庭先から葉をとってきて、簡単に調理できることから、急な来客のもてなしにも重宝し、毎日の食卓に登る機会も多かったそうです。かきちしゃをちぎって、酢みそやごまなどと合えた「ちしゃなます」は、「いとこ煮」とともに、萩を代表する郷土料理でもあります。明治時代には「かきちしゃが庭に植っていれば長州人がいると思え」といわれるほど人々に愛されていたそうです。

伝統野菜と呼び名

こうして、地域の古くからの食文化や風習に欠かせなかったはずのものが、流通からこぼれ落ちたために、栽培まで途絶えそうになっている。なかには、地区によって異なる呼び名となり、名前が統一されていない野菜もありました。


例えば、葉もの野菜の多くが霜で痛む厳冬期に、畑のなかでひときわ鮮やかな緑色を保ち続ける「あざみな」。自家採種が多く、地域によっては畝間などで栽培していたために、様々な系統に分化し、「あざみな」「寒しらず」「ちこり」など、呼び名も異なる様々な分布になっていました。これらをあつめて、葉の縮れ、辛みの程度、耐寒性を調べ、むつみ地域のあざみなが、辛みが鮮烈でえぐみが少ないことから、食味の評価が高く品質的にすぐれていることをつきとめました。


他にも、萩ころげ蕪、萩たまげなすとしてブランド化された田屋なすなどを研究。幸坂光彦さん、幸坂國義さんなど、作物をよく知る農家の方にアドバイザーとなっていただき、栽培。試食会を繰り返すうちに、萩ころげ蕪は収穫が遅れても固くならず、「す」が入りにくいこと、また500g以上にもなる田屋なすは、大きな見た目とはうらはらに果肉がやわらかく病み付きになる味であるなど、一般的な野菜とは違う特長を伝えて活かす方法をさぐりました。


こうした取組みの中、道の駅やスーパーなどで販売し、地元に流通させていくというだけでなく、数多くある市内の飲食店に持ち込み、地元を愛する食のプロたちに、メニュー開発をしてもらうことになりました。

萩ごぼう


今年、新たに力を入れ出したのが、「萩ごぼう」です。一般的なごぼうより収穫時期が早く、香りのよいアクが少ない品種。小振りで、出始めの頃は、茎もふきのように食べることができます。


狭い地域での栽培では、「旬の時期」つまり出荷可能な期間が限られてしまう、というのが流通にとっては課題になります。それを最大化できないか。標高の異なる地域での栽培特製を研究し、出荷時期をずらす産地内リレー栽培を試みました。例えば標高200〜300メートルの中山間地域では、10月中下旬に蒔けば、6月中旬に収穫。平坦地では10月末に播くと3月中旬から収穫。また、不織布をかけることで生育が促進され、同じ蒔きどきでも収穫を早め、収穫時期が拡大できることが分かりました。

新しい世代の日常に



萩田町商店街の中にあるラセイバという店では、無農薬、無添加にこだわり、伝統的な食材や地元の食材などを活かした料理を提供しています。東京の飲食店で数年勤務していた30代の浅井さんが萩に移住し、半分が空き地物件である場に、建物から自分で手づくりした雰囲気のあるお店。遠くから外国人観光客や有名なミュジシャンもふらりとやってきたり、一次産業に関わる人たちも集う、文化の交差点のような存在にもなっています。

「伝統野菜があることを、そもそも意識していなかった」という浅井さんは、『商品として世にひろめたいというよりも、ここにもともとあった生態系や、文化を残していくことに役立ちたい』という思いを持ちました。

なかなか売りになるポイントがないように思えた素材を、どう活かしたら料理に活かせるか、工夫を重ねました。

そしてできたのが、萩ごぼうの冷製豆乳ポタージュ〜かりかり牛蒡チップ添え〜このスープを飲みに、週末の萩を旅しようか、と思ってしまうほど、魅力的なメニューです。

在来種野菜に対する、お客さんの反応は、「へえ、こんなのがあるんだ。」知らなかった、という若い人から、「まだあるんだ!」と感動する年配の人まで様々。小振り、アクが少ない、甘みが強いという特長を持つ萩ごぼうの「ごぼうでこんな味がでるんだ」というのを体感してもらえました。

在来種野菜には、家庭料理的や郷土料理的な、「なます」やつけものといった使い道がもともと多かったのですが、浅井さんは、ポタージュ、パスタの具材に使用することで、「伝統野菜であるけど、伝統的な野菜料理とは違う使い道がある」ということ、をアピールできたのでは、といいます。

ラセイバの食材選び

浅井さんは、食材選びに対して独自の基準をもち、食材の半分を生産者から直接仕入れています。その基準は、無農薬の安全なものという他に、地産のもの、難しければ県内、それでもなければ「使わない」というもの。その時期に、地域で手に入る食材に合わせて、メニューを決めています。

在来種野菜が少なくなった背景には、全国どこでも画一的なメニューに合わせて、季節を問わず、同じ野菜が手に入る市場を、私たちが求めてきたという一つの原因があります。また、流通用の野菜は、どうしても、一定かつ均一の大きさの野菜を多く作る要請があるのでは、と浅井さん。地方の農村では、流通の大半を担う、農協の力が強いため、農家自身がやりたいことをやれていない、という傾向もあると話します。そのなかで、生産者と直接つきあうつながりのなかに、在来種野菜の流通も組み込まれていけば理想的だと浅井さんは語ります。こうした取り組みの先にこそ、今までとは違う農業、地域の経済のあり方が見いだせるかもしれません。

必ずしも「日本一おいしい」ではなく、「この町にはこんな美味しいものがある」という生活に根ざしたもの。地域でニーズがあって、認められているもの。それこそが在来種野菜の理想のあり方ではないかと語る浅井さん。農家さんがせっせと作るだけでなくて、実際に使ってみて「こういう美味しさがあるんですよ」ということをこれからも紹介していきたいそうです。

そしてこれから

こうして、古くからの伝統野菜を使ったメニューが街にちりばめられるようになった萩市。たまげなすや萩ごぼうは、萩の道の駅やスーパーなどでも季節になれば手にはいるようになりました。


道の駅萩往還では(株)みどりやさんが販売している「たまげなす」バーガーが人気(冒頭写真)割烹千代という郷土料理のお店では、あざみながレタスまきのような名物巻物となっています。割烹千代の大将は、「伝統野菜は、季節ごとに旬があり、6月のたまげなすは、実がやわらくジューシーなので田楽で出しています。秋が深まるこれからは、ころげ蕪、これは甘みがあるのでなますにしています。土地になじんだ栽培方法で育つ気候風土にあった食べものを、地元の味として表現していくのは、いいですね。お店で出している魚と一緒で「こちらでしかたべられない」ものです。世の中の流れが、効率や大量生産、ではなく、その土地でしか食べられないもの、を重視するようになってきていることを、感じることができるので、この取り組みは大歓迎です。」と語りました。


地域の人々が古くから愛してきた作物とそこに住む人々の技を組み合わせ、雇用をうみ、地域をかえてゆく取り組み。他の地域にとっても大きな参考となりそうです。

萩の木になるモノづくり協議会

萩市は、海、山の幸が豊富で、古くから食文化が栄え、その食文化を支える萩独自の野菜が多数ありました。しかし、戦後、農作物の品種改良や食生活の洋風化により、地域独自の歴史や伝統を有する品種が次々に店頭から消えていきました。


そこで萩の木になるモノづくり協議会は、①生産者の雇用創出、②新しい萩の特産品創出、③伝統野菜の復刻と次世代への継承を目的に、新たな地域資源として「萩の伝統野菜」の復活を目指し、それぞれの伝統野菜に応じた流通の調査、飲食店での無料提供並びに特産品化や加工食品開発を行っています。
新しい世代の日常に
萩の伝統野菜を使ったレシピを募集します!

(野菜は、萩の道の駅やスーパーなどで手に入りますが、入手方法についても以下にお問い合わせください。)

宛先
〒758-0041 山口県萩市大字江向457-2
萩の木になるモノづくり協議会 萩の伝統野菜復活プロジェクト宛
tel 0838-26-4121  fax0838-26-4121
haginokimonozukuri@gmail.com

−ラセイバ− La Ceiba 萩商店街の自然派カフェ&バー
〒758-0047 山口県萩市東田町92
TEL 0838-21-4331 FAX 0838-21-4332

伝統野菜ネットワーク 
http://www.dentouyasai.net/

浅井さんからのメッセージ
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都会の暮らしだけでないくらしが、日本では色んなところでできて、萩もいわゆるいろんな面で全然違うライフスタイルというのがあるので、切り口が、在来種野菜のような食でも、歴史をたずねるでも、自然を楽しむでも、違った日常をみれるのが、萩という街です。311以降の時代を生きる人たちに是非みてもらいたいと思います。


萩野菜の入手についてですが、木になるプロジェクトに問い合わせ、という形ではダメですか。やっぱりまたまだ形になっていなくて、プロジェクトで扱っている品目全部が市場に出ているわけではないのです。たまげナス、萩ごぼうは季節になれば地元道の駅、スーパーで買えます。