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にんじんレボリューション!
作物に聞く。

「植物のちからで、福島の未来を取り戻していきたい」 大内信一さん。

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10年目の転換期

農を軸に世界の地域づくりをつなぐNPO法人APLAの野川未央さんと吉澤真満子さんが、何度も福島に通い応援している「にんじんレボリューション」のお話を、生産者の大内さんよりとびきり美味しいにんじんジュースを飲みながら聞きました。

福島県二本松で生まれ、1960年から農業を営む大内信一さんは、就農10年目に「本物の農業をやりたい」と、農薬や化学肥料を使わない有機農業に転換しました。その後、志を同じくする仲間たち15人とともに、既存の農協の中に、「二本松有機農業研究会」をつくりました。

大内さんにとって「本物の農業」とは、ただ作物さえ作ればよい、経済的利益になればいい、という今の工業化された農業ではなく、安全な食べ物と環境を守るもの。

有機農業が日本に広まった30年間。しかしその先に。。

1980年代に田畑への農薬の空中散布*が始まった際には、やめるよう行政に働きかけて、それでも米の収量が落ちないことを、まず自分たちの集落で実証しました。それをきっかけに、散布は他の地域でも次々と取りやめになるなど、仲間と共に日本の有機農業における先駆的な事例をつくってきました。

こうして長年、地域や人とのつながりのなかで、何とか有機農業を根付かせようと取り組み、手間をかけて地域づくりをすすめてきた大内さんたちは、2011年3月11日の震災後に発生した東京電力福島第一原発事故により、農地の放射能汚染という問題に向き合わなければならなくなりました。

「これほど、つらく悲しい思いで土に接したことはありません。美しいもの、綺麗なもの、大事にしていたものが崩れ去った」と大内さんは言います。

畑の土壌がセシウムで汚染されたために、農作業時の被曝の問題、そして、作ったものを出荷してよいのかという問題に直面しています。作ったものを喜んで食べてもらえないから、と農業をやめてしまう人も出ました。また、福島では有機農業は続けられない、と別の地に移った仲間もいます。

作物の強さ

それでも、大内さんはその土地に立ち、作物と向き合うのをやめませんでした。「植物のちからを信頼している」そして、「作物がすべておしえてくれる」と。

具体的には、自分たちが耕してきた土地で、種をまいて作物を収穫し、セシウムを検査すれば、セシウムなどの放射性物質がどの作物には移行しやすいかなどを知ることができます。

残念ながら、大豆や米には放射性物質が移行しやすいので、対策を地域全体で取り組み、それでも作物を育てることで、少しでも土壌を浄化していこうと作り続けています。大豆やひまわりから絞る油には、放射能が移行しないため、畑で油田をつくろうという取り組みや、土壌に籾殻をまくことで、セシウムを吸着させるなど、これまで行ってきた有機農業を通して得た知恵と工夫を重ね、「移染」と揶揄されるような表面ばかりの「除染」ではない取り組みをつづけています。

味の秘密は、土づくり

一方、ナスやキュウリやトマトなどの夏野菜、そして、ニンジンには、土壌の放射能汚染の作物への移行が比較的少ない、ということが分かってきました。

ニンジンは、大内さんが特に思いを込めて、土づくりから取り組んできた作物のひとつです。二年前、収穫量が多かったニンジンを加工しようと思いたち、ジュースにしました。同じ農家である新潟の鶴巻さんが、雪深い冬の仕事としてはじめた農産加工場に依頼し、すりおろしたニンジンに、愛媛のレモン果汁と群馬の梅シロップを加えました。それ以外に余分なものを混ぜていない純粋なニンジンの味を楽しめます。裏ごししたやわらかいニンジンの繊維がそのまま入っているのも特徴です。

二本松でのニンジンの蒔き時は8月。種蒔きの時期が半月でもずれると、ジュースにしたときの味が全く違ってしまうそうです。味の決め手は、ニンジンが真っ赤に熟す、完熟の状態。急に堆肥を蒔いたのでは、味の良いニンジンを作ることはできません。甘さののったニンジンは、時間をかけてじっくりと土づくりに取り組んできた結果なのです。

メカニズムを知る実験はつづく

夏の雑草対策を工夫することで、最近は収量が格段に増えてきていました。マルチとよばれるビニールを敷いて、真夏の強い日光のなかで10日間くらいおき、雑草の芽を取り除くことに成功しました。

このビニールによるマルチは購入費用もかかり、ゴミになるため、今年からは代わりに「コンパニオン・プランツ*(相性の良い作物)」を蒔いて雑草を抑えられないか、という実験をしています。 セシウムを検出限界1Bq/kgまで測定することができる機械で、昨年生産した、にんじんジュースを調べたところ、最初の製造ロットでセシウムが1Bq/kg、2回目の製造ロットでは不検出。世界で一番厳しいドイツの基準(放射線防護令)を参考にしてAPLAが設定した4Bq/kg以下のものであれば販売する、という数値を大きく下回ることができました。

日本一安全な農地へ

今後の目標は、農産物がセシウムを吸うメカニズムについて、引き続き研究しながら、最善の方法を見つけること。

そして、福島は「日本で一番安全な農地になれると信じている」と大内さんは言います。震災以前より有機農業に力を入れてきている(県に有機農業推進室がある)、ほとんどの作物はきちんと測定して出荷されている、研究者やNPOのメンバーも定期的に訪れている、など様々な条件が揃ってきています。そして、農家自身のなんとかしたいという強い思いがあります。それらが絡み合い、福島の農業を再生することが、日本全体の農業の未来にもつながるのではないかと感じるのです。

私たちが依存してきた原発も、農薬や化学肥料の問題も、効率ばかりを追い求め、見えないところでつくられるものを、根拠なく「安全」と言われるまま受け入れてきた結果とも言えます。今後は、エネルギーのあり方、農業のあり方、食のあり方、私たちの生活と命に関わるこうした問題の本質を私たち一人ひとりが見つけなおしていく必要があります。物事の本質に向き合い、信じるものを見つけなおし、ひとつひとつ、愛をこめて取り組んでいく大内さんのレボリューション。50年前から続く「日本一安全な農地」をつくる取り組みに、ニンジンから、キッチンから連なっていきたいと思いました。

農薬の空中散布

ヘリコプターなどの小型航空機から農薬を散布する方法。米や大豆につくカメムシなどへの対策として、低コストで広範囲に散布できる方法として昭和40年代に実施面積が拡大しましたが、住民への健康被害が各地で問題となりました。その後、住宅や他作物への対策として、散布高度が高く、無人産業用の小型ヘリコプターに切り替わり、近年は、生活環境への配慮から、無人ヘリコプターの防除面積も少なくなっていますが、多くの都道府県でなお実施されています。

コンパニオン・プランツ
種類の異なる作物を一緒に植えると、病害虫を防いだり、雑草をおさえたり、成長を促進したり、収穫量が増えたり、風味や芳香を良くしたり、など、様々な良い効果を生み出す植物の組み合わせのこと。
『福島百年未来塾』に注目!

いま福島が直面している事態を福島の人だけに押し付けてしまうことのないように、地域再生についてともに模索し、未来に向けての一歩を踏み出すための学びの場としてスタート。今回お話を伺ったNPO法人APLAが、震災後福島に通い、大内さんたち二本松のみなさんとともに、福島百年未来塾を運営しています。今後は、地域で農民がつくる自然エネルギーなど、実践に向けて取り組みを進めていく予定です。

『福島百年未来塾』に注目!

いま福島が直面している事態を福島の人だけに押し付けてしまうことのないように、地域再生についてともに模索し、未来に向けての一歩を踏み出すための学びの場としてスタート。今回お話を伺ったNPO法人APLAが、震災後福島に通い、大内さんたち二本松のみなさんとともに、福島百年未来塾を運営しています。今後は、地域で農民がつくる自然エネルギーなど、実践に向けて取り組みを進めていく予定です。


二本松有機農業研究会 http://www4.ocn.ne.jp/~dake/ynk/yuki.htm
福島県二本松市岳温泉1-16


NPO法人APLA http://www.apla.jp
東京都新宿区大久保2-4-15

大内さんより
yas-ouchi

ニンジンは、夏の暑さに弱いのが特徴で、2、3日すると萎えてしまいます。でも冬のニンジンをジュースにしておけば、夏にも使えます!


みなさんもジュースを使ったレシピを考えてみてください。


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* 「農を軸とした地域づくり」を国内外で支援しているAPLAのインターネットサイト(APLA SHOP)から購入できます。


リンク http://www.aplashop.jp/shop/item_detail?category_id=0&item_id=783603