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大豆レボリューション!
食卓、畑、都市、農村。食の未来をひらく場づくり。

NPO法人トージバ主宰 渡邉尚さん

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田舎って面白い!

味噌、納豆、豆腐、豆乳、きなこ、枝豆。日本の食卓の主役といっても過言ではない、小さいけれど大きな存在、大豆!そんな大豆に着目した取り組みを行っているのが特定非営利活動法人トージバ(以下、トージバ)です。

トージバは、「場」をデザインするNPO。伝統文化の湯治場のように、文化に根ざした本当の「持続可能な循環型の地域社会」の実現に向けて、「食」、「農」、「都市と農村の交流」における課題に焦点を絞り、 地域が持つ個性や魅力を再発見/再構築する手法を用いて、地域活性に寄与することを目的に活動しています。

代表の渡邉さんは、東京の下町で生まれ育ち、小さい頃から新しい遊びを探して仲間に提案するのが大好きでした。学生時代はラグビー、スノーボードにはまり、卒業後は、東北のスポーツメーカーに就職しました。東北から九州まで、日本各地の農村の文化に触れ、地のものを食べることや、陶芸などの手仕事など、それまで知らなかった日本、そして生活の「豊かさ」に惹かれました。

そのうちに「都市農村交流」を志すようになり、東京に戻ってトージバというNPOを立ち上げ、都市近郊の休耕地に、参加者を募ってみんなで大豆を蒔く、という取り組みをはじめました。2004年のことです。

大豆を蒔いてみよう

きっかけは、農家の友だちに大豆について聞いたこと。北から南まで長い日本の国土の中には、その地域の気候風土にあった地大豆(在来種・固有種)300種類、名前のないものも入れるとなんと1,000種類もの大豆があります。その昔、産業ではなく自給作物だった頃には、田んぼの畔に蒔いて、種をつないできたのだそうです。

食卓に大豆がのぼらない日はほとんどないとも思えるのに、日本の大豆自給率は、わずか5パーセント(農林水産庁2004年度食料需給表による)。また、日本の耕地面積の10%以上が放置されていて、国民の3%である農業従事者のうち7割は60歳以上だといわれています。

いつも新しい遊びを探してきた渡邉さんは、「大豆の種を蒔くこと」を、周囲に提案し、ひとまずやってみることにしました。

レボリューションがはじまった!

『大豆レボリューション』の参加者たちは、まずは6月の夏至の日に、大豆の種をまきます。半年間に5回くらい草取りなどの作業をし、途中で枝豆を収穫、収穫した大豆を天日で乾燥させ、脱穀。2月には手前味噌を仕込みます。これまで雨が降らず、なかなか芽が出なかったり、猿に食べられてしまったりということはありましたが、「まきどき」と「在来種」というポイントをおさえれば、農薬も化学肥料も全く必要なく、すくすく育つそうです。

この取り組みに参加しているのは、食に関心の高い女性、農に興味のある学生、誘われたからついてきてみたという人など様々。平日はデスクワークで忙しい人が、リフレッシュするために参加し、渡邉さんたちはそれを「アース&チャージ」とか「農レジャー」と呼びます。参加した人の多くが家庭で味噌を仕込むのを習慣にし始めたり、大学の教員が自分で学生と畑を運営するようになったり、豆腐屋さんが大豆畑をやってみたり、はたまた、一緒に種まきに参加した若者同士が結婚したり、と大豆畑は参加者のライフスタイルや人生の一部にもなっています。

世界の大豆事情と足元での実践

この10年で、大豆をめぐる世界の情勢も変化をみせました。中国など世界の市場拡大にむけ、世界の貴重な熱帯雨林は切り開かれ、多様な生物の生存は脅かされ、遺伝子組み換え大豆の普及が急速に進みました。大豆のバイオ燃料としての産業用への広がり、新興国などを中心に拡大する食肉産業などが新たな需要を生み出し、生産を後押ししています。生産規模が拡大する中で、顔のみえる関係の下で私たちが大豆を消費することは難しくなっています。

世界の食のシステムに問題や不安を抱える中、大豆を見直し、大豆の種をまくという実践に意味がある、と渡邉さんは言います。

「大豆レボリューションは農の現場とは縁のなかった消費者といわれる都市生活が、みんなで一緒にまずは大豆から自給する。それと同時に農家を応援しましょう、という活動です。実際に種をまき、育て、収穫して手前味噌を食べるという実践を通じて気づかされることは意味深く、またその気づきから広がる多くの種まきは計り知れません。大地(畑)は作物をつくるだけでなく人間にとってもとても大切な場です。」

コミュニティを育てる

現在「大豆レボリューション」では、北海道から九州まで、30カ所の提携畑で、地大豆を収穫。首都近郊に限らず、それぞれの地域で重要なつながりができています。遊休耕地を提供したり、指導をしてくれた農家の方が、オーガニックカフェや、援農をする若者たちと仲良くなったり、それが、農家の若者たちにも影響を与え、農の仕事の価値を見直すことにも一役買っています。この一番のレボリューションともいえる「若者たちと農家とのつながり」は、定期的に開催されるオーガニックマーケットや、農業をテーマにした数万人規模のフェスイベントへと発展、多くの過大を抱える日本の農業に興味を持ってもらい、そのあり方を一緒に考えてゆく人が増えています。それを、渡邉さんたちは「大豆でつながるコミュニティ」と呼びます。

つなぎ、ひろがれ、素敵な種

コミュニティづくりのために、都市での発信も大事にしている渡邉さんたちは、ある時、東京のオーガニックカフェで「地大豆カフェ」というイベントを開催しました。
日本各地の在来種である地大豆のうち、赤くて小豆みたいな色をしている紅大豆に注目するプログラムのお知らせに、
生産地である山形県川西町の役場の方が気づいて参加されました。会場は満員。「東京の若者たちにこんな風に注目されるんだ」と勇気づけられた役場の人たちは、農家と協力し、この豆を地域おこしに使おうと一念発起。一部高齢な農家の方たちが産業用の畑の畔にまいて、
ほそぼそとつないでいた地大豆の種を、まちぐるみで生産するようになりました。

数年後、この川西町で、全国大豆サミットが開催されるまでになりました。全ページ山形牛だった地域の特産品のパンフレットは、その半分が紅大豆の製品になっています。

植物の力を信じて種をまき、出会った人とつながる。その人と人のつながりのなかで、新しい時代の「農」の概念をつくっていく。「この種をつなぎ、広げてゆけば、大丈夫。」と渡邉さん。日本の食卓を見直すヒントが「大豆レボリューション」には隠されていると感じました。

日本の食料自給率

現在、日本の食料自給率は、73%(昭和40年)から39%(平成23年)まで大きく低下し、大豆や小麦などを海外輸入に大きく依存しています。食生活が変化し、冷凍食品や輸入飼料による食肉製品など海外原料に頼る加工食品の摂取が増えたことが大きな原因の一つです。


しかし、日本が大きく頼る国外の食料生産のあり方にも多くの課題があります。輸出を念頭に展開される単一作物の大規模生産は、化学肥料や農薬に依存し、生態系への負担の大きさが指摘されています。またこうした大規模農業から得られる収益が、地域住民や農作業労働者に還元されていない、もしくはその国の食料安全保障を脅かしているという実態も明らかになりつつあります。日本国内の農業のあり方を考える一方で、国外の資源や食料を消費する立場としての責任もまた求められているのです。


「自給率」を考えるとき、国内外の食料生産のあり方や私たちの食料消費のあり方にも目を向けていく必要があるでしょう。
遺伝子組み換え大豆

生物の性質を遺伝子から人工的に組み替えて作り出された作物を「遺伝子組み換え作物」と呼びます。世界全体で生産される大豆の約7割はGM大豆(遺伝子組み換え大豆)だと言われています。日本では、輸入している大豆の66%を大豆油(ほぼ全量遺伝子組み換え)として利用しています。日本での作付けは認可されていませんが、国内でも実験的に、遺伝子組み換え大豆の栽培が始まっています。


多くの場合、遺伝子組み換えを行うことで農薬への耐性をもたせた種は、その農薬(除草剤など)とセットで農家に向けて販売されます。こうした種は、アグリビジネスといわれる大企業がその特許を独占しているのが実態です。


遺伝子組み換え作物は、作物生産量の増加を通した食料問題/貧困問題の解決を標榜してその普及が進められてきました。しかし単一作物の生産を目的した大規模農業から得られる利益は、一部大規模農家やアグリビジネスなどの企業に専ら還元され、少なくとも現時点では、小規模農家などの貧しい人々の生活の向上や飢餓人口の改善に貢献しているとはいえないのが実態です。


また、遺伝子組み換え食品の安全性や是非についても議論は決着を見ていません。遺伝子組み換え食品は安全だと言われる一方で、摂取した動物から免疫力が低下するなどの実験結果が報告されており、その影響の全貌はあきらかになっていないという観点から、その使用や普及の是非についての慎重論も国内外に根強くあります。
大豆レボリューションに参加しよう
http://www.toziba.net/daizu_revo/

千葉事務所〈と〜じ舎〉: 千葉県香取郡神崎町武田890
宮崎事務所: 宮崎県串間市市木726
メッセージ
daihyo
私のレボリューションは、大豆でしたが、皆さんそれぞれに、畑から、食卓から、庭から、ベランダから好きな作物を通じたレボリューションを起こせるはずです。あなたの作物はなんですか?それぞれが、実践、または、応援しているレボリューションを、ぜひ教えてください!(渡邉尚)