TOP レボリューション vol.3 さつまいも

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さつまいもレボリューション!

宮崎県 大束 世良田真由さん

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芋畑のまんなかに、カフェ。

宮崎県の南、鹿児島との県境に、さつまいもの生産地として有名な大束(おおつか)という地域があります。芋畑のまんなかに、お洒落なログハウス風のカフェがたたずんでいます。

芋農家の母に育てられた、世良田真由さんのレボリューション。カフェから土に向き合うことが、地域全体、もしかしたら日本の農業までも応援することにもつながる、縦横無尽に根っこの広がる革命です。

より広く、早く。

祖父から受け継ぎ、だんだんと広げてきた土地で、世良田さんのお母さんが一人でお芋を育ててきました。「一人1町」といわれるなかで、2町3反。ただでさえ広い畑のところを、近年は足を悪くし、一度は「やめる」と考えましたが「やっぱりこの仕事しかできない」と、現在まで続けています。
娘の真由美さんは、土の成分の違いによる味はもちろん、色が美しいという見た目の良さも手伝って、大束の芋「紅寿(こうじゅ)」が有名になる過程をみてきました。あちこちにあった田んぼも、次々に芋畑に変わり、周囲はすべて芋生産農家という地域になりました。

昔は「普通掘り」と呼ばれる農事暦で、6月は農閑期で休むことができていたのが、超早作の生産物などがでてきて息をつく暇がなくなり、さらに芋焼酎用の出荷もあるため、忙しくなっています。
そんな風にして育てて収穫までしても、組合では収量に上限があるため、余剰分は捨てられてしまいます。

道の駅から来たお客さん。

幼少の頃から、お母さんの農業を手伝っていた時期もありましたが、「芋の仕事をしていると料理をする余裕もない」という状況のなかで、「芋を使っていつかカフェがしたい」と思いはじめました。
宮崎市内の調理師の専門学校に通いましたが、田舎が恋しく、週末は地元へ帰って来ていました。中でも「田舎のカフェ」が好きで、様々な農村に出かけては、小さい看板を出して営業しているカフェを探しみてまわる、というのをずっとやってきたそうです。

あるとき、近所に道の駅ができはじめたので、芋のお菓子をつくる作業所を自宅の一角につくりました。お菓子の評判を聞きつけて、買いにきてくれたお客さんから「コーヒーも飲めないの?」とリクエストされたのがきっかけで、喫茶店を開始。
数年後には「芋畑を見渡したところにお店をつくりたい」という夢もかない、ログハウスを建てて「木の実」と名付けました。

目で楽しめる紅寿。

流通の都合で、虫が一カ所噛んでいるだけでも、芋は規格外になり販売できません。「捨てるばっかりだけど、そこをのぞいて綺麗に使えば、味は変わらない。」 と、焼きプリンや、ケーキを作り始めました。
人気は、お芋とあんこをつかったチーズケーキや、チョコレートケーキのなかにお芋とクリームチーズを練り込んだもの。本をみたり、組み合わせてみたり、一つのレシピにこだわって研究を続けるのが世良田さん流です。

10歳の娘さんも、カフェの仕事に興味をもっています。少し前まで「おばあちゃんの畑の仕事のほうがいい」と言っていましたが、最近は、調理師の専門学校に行くと言い出したそう。「お菓子をつくれるようになったらお母さんが食事を出せばいいよ」と、計画的な娘さんに励まされます。

「芋って使いやすくて、目にも楽しんでもらえるのが好きです。」とくに地域の品種、紅寿は、見た目も美しく、お菓子とお芋を2、3本セットすることもあるそうです。カフェのテーブルには、芋をお水にさして葉を楽しむディスプレイもあります。冷蔵庫に入れなくても保存がきく、用途が色々ある、などサツマイモの魅力は無限だそう。

生産の時間を味わってもらう、芋畑のオーナー制度。

農業を知らない人たちにも芋やその生産の現場にもっと近づいてもらおうと、今年から取り組みはじめたのが、芋畑のオーナー制度です。世良田さんのお母さんが農業をやめようとした際に、機械の処分などを相談しに行った市役所で、全国の様々な事例に詳しい担当者に薦められ、芋づくりを体験コースにしてオーナーを募集するという制度を始めてみました。

指導員は、世良田さんのお母さん。人のなかに入るのが苦手だと、最初は嫌がっていたのが、いまは、やるからには楽しまなくてはと前向きです。一度目はお弁当を作って、芋かりんとうをあげて、二回目は大変な除草作業の後にかき氷を食べ、ハーブを一緒に20種類以上植えて、バーベQもするなど、農的暮らしのお裾分けをしました。
巷でよくある子どもの芋掘り体験では、切っておいた蔓をひっぱらせるというものもありますが、こちらは収穫も本格的。ちゃんと「フナ底植え」をして、寝せて植えてあるものをひっぱります。応募は、最初は数口だったけど、子どもたちも集まったので結局は大人数。にぎやかに作業をしています。

「カフェには、芋畑をみながら、ゆったりとした時間を味わうために、来てもらいたい。同じものを同じようにつくり続けてゆく難しさに挑戦したい。今だに失敗したり、その日の気持ちで出来ばえが違ったりするから、そういうことがないように。」と定番のレシピを作り続ける世良田さんは、時間をかけて何年も収穫を繰り返してきた、お芋やお母さんの時間にしっかりつながっています。一度でとりこになってしまう人の多いスイーツの秘密もそこにあるようです。



(写真:「dolche&café木の実」では、甘藷のオーナーさんを募集しています。甘藷の苗植え付けや除草、そして収穫までの作業を通して、収穫の喜びと市の特産”甘藷”の素晴らしさや美味しさを体感しませんか?作業終了後は、「木の実」特製スイーツ&カフェでくつろぎのひとときを。)

農作物の”旬”について
有機栽培・自然栽培で収穫される農作物は特に、旬における一時期に重なる収穫・出荷の費用と市場における価格の下落が最大の問題点となっており、様々な収穫時期の延長が図られています。しかし本来の自然に沿った農法で生産され、身体に良く栄養価の高い農作物は、旬のものであり、収穫し出荷できる時期も限られるものです。
規格外野菜と加工について
野菜は大きさの大小(S・M・L)、色や形、品質を、A・B・Cなど(優・良・並)といった市場規格により振り分けられます。そのなかで、曲がっている、キズがついている、色が薄い、太さが足りないという理由で、定められた規格にあてはまらない野菜を規格外野菜と呼びます。そのほとんどが店頭に並ぶことなく廃棄処分され(一部はカット野菜や加工食品として流通)、廃棄率は生産量の約4割にも達するといわれています。
農業の6次産業化について
農家レストラン、農作物直売所、体験農園・・・。1次産業に携わる農業者が、2次産業の加工や、3次産業の流通にも関わる、農業の「6次産業」化を模索する人や地域が増え、国内外で、大きな流れになりつつあります。農家の経営を多角化し、収益率を高め、地域を活性化することにもつながります。
お芋のオーナー制度に参加してみよう
http://kinomi.at.webry.info/

①  体験時期 6〜10月下旬
②  内容
6月上旬〜中旬 お芋の苗植え付け
7月上旬 除草(草むしり)
10月下旬  収穫(いも掘り)
③ 料金 1口(10株)2,000円 *不作の場合は5kgを補填します
④ 特典 木の実の特製スイーツ等をプレゼント
⑤ 申し込み先 dolce&café木の実 TEL 0987-74-2834
定休日 毎週水・木曜日、第1・3・5日曜日
open 11:00 close 18:00
Lunch 11:30~14:30、Dinner 要予約(お問い合わせください)
〒889-3532 宮崎県串間市大字大平大塚原5892-52
世良田さんより
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生産者のひとたちに、食べるひとが見える場を。

農業をやっていると、自分を綺麗にするというのもなくなるし、人との会話もなくなる。地域の方々もあまりに忙しくて、コミュニケーションがとれなかったり、芋の話しかしなくなってしまったり。仕事が山ほどあるため、休むと損益になることもあります。そんな生産者のひとたちが、食べるひとが見える場所があれば、地道で厳しい作業の合間に、さわやかな風が吹くかもしれません。

後継者が少なく、遊休地もでてきています。市内でもここは、若い人が地元に帰ってくる率が一番高い地域でもありますが、元々住んでいる人たちも農地を求めて苦労してここに根付いたために、簡単には土地を貸したがらない、という問題もあります。芋の産地としての景観も保たなくてはいけない。オーナー制度などで、少しでも農業に興味をもっていってもらい、継ぐ人がひとりでも増えればと思います。